登校時間で周りに人が沢山いるから、近付いて小さな声で耳打ちして伝える。
すると元から大きな瞳は更に見開かれて、輝いた。
「茜ーーっ!!頑張ったじゃん!!」
その声の大きさに周りにいた人たちが何事かと振り返る。
注目集めて恥ずかしいし、明らかに周りに迷惑かけてるけど、自分のことのように喜んでくれる陽果に頰が緩む。
「ーーおはよ、阿波」
だけど、そんな陽果が後ろから聞こえてきた挨拶に一瞬で静かになった。
でも、仕方がないと思う。
朝から聞いる方のテンションが下がりそうなほど抑揚のない声。
しかも挨拶なんてされたことがないし。
恐怖と驚きで、普通の人間なら、何も言えないはず。
「おはよ、千堂くん」
振り返ると、そこには世界で一番爽やかな朝が似つかない酷い顔をした千堂くんが立っていた。
普通に挨拶を返す私に陽果は更に困惑した表情を浮かべる。
「……えっと、」
そして何やら千堂くんはじーっと陽果を見つめながら何かを考え始めた。