「別にそんなの関係ねぇんだよ。……男は、誰でも抱けるっつーの」
背筋が凍るほど、冷たい瞳。
実は優しい人なんだって分かり始めたはずだったのに分からなくなる。
目の前の人は……誰?
視線に泣きそうになって、逃げようと思うけど肩に置かれた彼の両手が私から自由を奪って動けない。
こうなると、もう突き飛ばすしか方法は無いのに、両手でどんなに力一杯押しても千堂くんの体はびくともしない。
……怖い。
この状況よりも、誰か分からないほど冷たい表情を浮かべる彼が。
感情が読み取れない綺麗な顔は私に恐怖しか与えない。
どうするのが正解か分からず私は下を向いて力一杯目を閉じた。
「……そんな細い腕で、弱い力で、抵抗なんてできねーだろ?どうしようもなく、怖いだろ?」
弱々しい声が聞こえたかと思えば、頬に温もりを感じて、思わず目を開けた。
「頼むから泣くなよ、阿波……」
そのまま恐る恐る顔を上げれば、泣くなと言いながら酷く泣きそうな顔をした千堂くんと目があった。