だけど先生がそう言ってくれることは純粋に嬉しい。
私が選んで今いる道も、間違いじゃなかったんだって思えるから。
「……私も、先生に会えて良かったです」
たくさん傷付けて、苦しめて、嘘をついてばかりだけど、それでもやっぱり私は先生に会えて良かったと思ってる。
それは、嘘じゃない。
今先生がいるこの瞬間を大切にしたい、本気でそう思ってるよ。
それなのにね、おかしいの。
先生の笑顔を見ても、前みたいに素直に好きだって、愛おしいって、思えない。
優しくされるたびに、好意を感じるたびに、喜んでる私の隅で、心が痛むの。
ーー『茜!』
突然遠くなった律を、優しすぎるキスを残していった律を、時々思い出して胸がざわつくの。
自分だけ幸せになっていいのか、未だに迷って、どうしたら良いかが分からなくなるの。
第一、律がまた自分のことを好きかも分からないのに、そんなことを考えずにはいられなくなるの。
煮え切らない、私の心。
……咲かない桜が、何だかもどかしかった。