「それって…」
「だから、先生を守るために酷いことをしたってことにするの。今、先生はかなり堪えてる。弱気になって優しくすれば簡単に信じる。下手したらそのまま茜ちゃんを好きになるかも」
「でも、それじゃ恋那ちゃんは…!」
確かに恋那ちゃんの言う通りにすれば、私は悪役にならずにすむのかもしれない。
まあ……好きになってもらうなんてことは、有り得ないだろうけど。
でも、それじゃ恋那ちゃんがたった一人悪者になってしまう。
「だから、あなたがそうやって先生に許される代わりに私にはーー千堂くんをちょうだい?」
「り、つを…?」
その言葉を聞いた瞬間、口にした瞬間、どうしてだろう。
今までに感じたことのないほどの胸の痛みを感じた。
「だって、先生に許されて、近付けたら茜ちゃんには必要ないでしょ?」
「そう、だけど…」
私にとって律が傍にいてもらってたのは、先生を傷付けるため。
だから、傷付ける必要がなくなった今、私は律に傍にいてもらう理由がないんだ。