自分自身にすら、理解できない感情があるのだから、尚更、他人なんて分かるわけがない。


ドアノブを捻り、ギギギという音をたてるドアから、私たちは屋上へと出た。



「んー、やっぱり気持ちいい」




伸びをしながら恋那ちゃんがそう言った。

今日は、学校が午前中までだったから、放課後といっても空はまだ青い。


澄んで、晴れやかだ。


確かに気持ちが良い。

こんな日は、寝転がってなにも考えずに過ごしたい。

……だけど、そんなわけにはいかない。




「さて、と。教えてあげるよ茜ちゃん」

「……うん」




そう言うとフェンスに寄りかかって、空を見上げた。


その顔は、余裕たっぷりな口調とは裏腹に、どこか切なげで寂しげで……。

私も近くで同じようにフェンスに寄りかかって、空を見上げた。




何だか、このまま吸いこれまれてしまいそうだ。

いや、いっそのこと、そうなればいいのに。



そしたら、きっと…苦しいことばかりの、この世界から消えられるのにね。