「ここ、試験に出すから覚えておけよ」
柔らかな春風にサラリと揺れる、綺麗にセットされた漆黒の髪。
形の良い唇から発せられる、心地いい低い声。
私たちを映す二重の綺麗な瞳。
通った鼻筋。
こんがりと焼けた肌に正しく配置されていて、その整った顔は思わず見惚れてしまうほど。
ーーなんて言い訳を心の中でしながら私は、授業はそっちのけで、この目に彼の姿を焼き付けていた。
やっぱり今日もカッコいいな……。
黒板に文字を書く後ろ姿すらカッコいいなんて、ある意味恐ろしいよ。
ねえ、先生。
実は私ね、どうしようもなく先生のことが好きなんです。
決して叶うことのない恋なのは、自分でも分かってるの。
だけど、仕方がないでしょ?
好きになっちゃったんだから。
「おい、阿波(あなみ)」