そんな陽果の動きを止めたのは私じゃなくて、隣に立つ律だった。
どうして律が陽果を呼び止めたのか、その意図が読めず、視線を律へと移す。
律と陽果はそんなに仲が良かった記憶がない。
だって元々陽果は律と話さないし、最近の律は夏休みを除いたら私とずっと一緒にいた。
……真っ直ぐと陽果を見つめる律は何を考えているんだろう。
律は私のことは、いつだって何でもお見通しなのに、私は彼のことが分からない。
悔しいくらいに、何一つ分からないんだ。
だからこんな時、ただ見つめることしか出来ない。
「今日、勝負をかける。まあーーどっちに転ぶかは分かんねぇけどな」
自嘲するような薄ら笑いを浮かべながら律はそう言った。
私には分からない単語ばかり並ぶ台詞に首を傾げる。
一体、どういうことなんだろう?
でももしかしたら、私の知ってること?
それとも本当に全然知らないこと?
でも話し方や、どっちに転ぶか分かんない、なんて何事なの?
……律と陽果は私の知らない何かを抱えてるの?