ようやく私に仕事をさせることを諦めたのか、ため息をつきながら隣の席に腰掛けた千堂くん。
そんな彼に机にうつ伏せたまま、顔だけを向ける。
目があって、ニコリと微笑めば怪訝そうな顔をされた。
「ねえねえ、千堂くんは誰が好きなの?」
「阿波に関係ねぇし」
そして何回したか分からない質問を口にすれば、彼もまた何回目か分からない台詞を口にした。
誰が好きなのか、さっぱり分からない。
同級生か後輩かも分からないし、好みも知らないから、絞りようがない。
ここから見てるって言ってたけど、ここから見える部活はサッカー部だけだし、マンガとかドラマでよくある音楽室でピアノ弾いてる少女も見えないし。
もしかして、千堂くん……なんて、あらぬ考えが浮かんだけど慌てて頭から消した。
だとしたら私なんかに簡単に教えてくれるわけないじゃん!
あんなサラリとカミングアウトなんかしないよね。
「まさかとは思うけど、一応言っておくだけだけど、女だからな」