「学校の方が、はかどるかな?」
家に比べて確実に誘惑は少ない。
この間、夏休みも図書室は自由に使って良いって言われたし、そうしようかな。
……だけど誘惑がないぶん、余計なこと考えちゃいそうだけど。
それにどうやったって数学準備室が気になると思う。
……だけど、行ってみるか。
そうと決めたら鞄に必要なものを詰め込み、掛けてあった制服に手を伸ばした。
「茜ちゃん。制服着て、どこに行くの?」
着替えを終えて部屋のドアを開けると、お母さんがジュースとケーキをお盆にのせて立っていた。
……やばい、怖い。
お母さんは笑ってるのに、目の奥が笑っていない。
制服着てるんだから行くところなんて限られてるはずなのに、私この前の期末でかなり信用無くしたんだな……。
「学校の方が、勉強はかどると思うから行ってくるね」
「……そう。行ってらっしゃい」
そう言うと、お母さんは笑顔を作り直してリビングへと戻っていった。
納得してもらえたのか分からないけど、私は学校へと向かった。