「私は、気付いてあげられなかった。分かってあげられなかった」





悔やむように、痛みを堪えるように、切なげに揺れる瞳。


そして、次の瞬間。




「陽果……?」





私は小刻みに震える彼女の腕の中にいた。

私の肩に額を押し付けて、陽果はただ私を抱き締める。



ねえ、陽果、教えて?

何にそんなに怯えてるの?

何にそんなに後悔してるの?





「私は……茜を、止めてあげられなかった」





あなたを怖がらせるものを知りたかった。

答えまでは知れなくても、せめてヒントが欲しかった。


それなのに、いざ答えのようなものを突き付けられると、私の思考も動きもストップした。


呼吸の仕方を忘れたように、吐く息が荒い。

動悸がする。

嫌な汗が背筋を伝う。



きっと今は、陽果よりも私の方が確実にーー震えてる。



「茜……っ」




嫌、やめて。

何も言わないで。

お願いだから、今は何も言わないで。