だから仕方がなく首を縦にふった。
するとその返事に満足したのか、『行くぞ、茜』と言うと、さっさと教室から出ていってしまった。
「え、ちょっ、律!」
「いってらっしゃーい!!」
何だか楽しそうな女子たちに見送られて、私も教室を出る。
ーー阿波 茜と千堂 律は付き合ってる。
どちらかがそう言った、というわけでは無いけど気付けばそれは当たり前のように受け入れられて、そういうことになっていた。
律にとっては狙い通りなのかもしれないけど、私からしたら胸が痛む。
確かに律のことは好きだし、大切だとも思う。
だけどそれは決して恋愛感情なんかじゃない。
本当に心から律のことを好きな人がいたら傷付くよね。
少し前を歩く背中を見つめる。
このルックスで他の男子には無い大人びた雰囲気。
これでモテないわけがないんだから。
それに……律には、好きな人がいる。
その人が勘違いしてしまう。