「お前さ、あんなでけぇ声で喋ってて、いくら人が来ない階段だからって…バカなわけ?」




決意したその日にバレてたんだ……。


確かに人が来ないからって油断してた。

というよりも、辺りを気にするほどの余裕はあの時の私には無かった。




「見てるだけのつもりだったんだ。お前が一人でバカみたいに一生懸命、空回りするのを。……ただ、事情が変わったんだよ」


「……事情?」




少しだけ声が低くなった気がして、背筋を伸ばす。

図書室の空気も少しだけ張り詰めたものに変化した気がした。




「そ。まぁ、まだ詳しくは話せねぇけど。協力する理由は、簡単に言えば…お前の真逆?」

「……ま、真逆?」

「ん。つまりーー」





先生に恋をしたこと以外、平凡だったはずの私の高校生活。

だけど三年の一学期。


私を取り巻く環境は目まぐるしく変化しだした。





「俺は、矢野が大嫌いだから」





……もう、後戻りは出来ない。