「ねえ……別れなよ、先生」
私のものになって、なんて私にはもう願う資格なんてないから。
本当の気持ちなんて言えないから。
遠回しに、ほんの少しだけ、本当の気持ちを言葉にのせることを許して。
「ねえ、先生」
もう一度、呼び掛けると先生は私の横を通りすぎて窓辺に向かった。
その姿が何だか、昨日と重なって切なくなった。
無性に、泣きたくなった。
ただ、違うのは、その背中が酷く寂しそうで頼りなさげだということ。
呼びかけても驚いたように振り向いて、笑ってくれないこと。
「それだけは、無理なんだ…」
「何でよ!私は先生のことを思って、そう言ってあげてるのに!」
私にバレたんだよ?
他の人にバレるのも時間の問題かもしれないじゃん。
ううん。
もしかしたら、もう知ってる人だっているかもしれないじゃん……。
そしたら、先生はこの学校にいられなくなっちゃうんだよ?
ねえ、先生はそれでも良いの…?