「そしたらね、簡単な話だよ。千堂くんの大切な人を傷付けたらいいの」




ガンと鈍器のようなもので思いっきり後ろから頭を殴られた気がした。

もしかして…。





「だって千堂くんを直接攻撃したところで傷付かないでしょ?しかも嫌われちゃう」

「だから、阿波を傷付ることが目的で矢野に近付いたって言うのか?……だからって俺は別に…」




考えすぎだろ。

高校生の恋愛で、そんな深読みして推理するようなことが必要なわけがない。


というか、どうかそうであって欲しいっていうのが本音だった。

全てがそんなに上手くいく保証なんてないのに、リスクが高すぎる。




「本当に千堂くんは何ともない?茜が傷付いて、自分見失って。そんな茜を見てて千堂くん、辛いんじゃない?」

「俺は……っ!」





俺は、俺は……っ。

抵抗したいのに、言葉が出てこない。


だって俺は実際に阿波が好きで、自分から阿波を傷付けようとしたのに、傷付いた阿波を見て苦しんでる。

それは紛れもない真実だったから。