4月、新しい制服に身を包んだ高校生たちがぎこちなく歩いている桜道、
一人の女の子が不安そうに歩いてきました。

何を不安に思っているのかはよくわかりません、
でもその子は一人で歩いているのです

彼女の名は…


「わ、私の名前は五十嵐琴葉です…よ、宜しくお願い致します!」


そういって深く頭を下げた瞬間、一気にクラスの笑に包まれた。


「なんだよ今のあいさつ全然聞こえなかったぞ!」


「もっとはっきり言えよ!」


「ご、ごめんなさい…では、最初から言わせていただきます…」


私がそう言うとクラス中が一気に静かになった、みんな私の言葉を期待いているのだ。

不安ながらも私は声に集中して二度目の自己紹介をした。


「初めまして!私の名前は五十嵐琴葉です!」


そう言った瞬間また笑いが起こった。
理由はあまりにも声に集中しすぎて裏声になったからだった。

「あいつ声裏返ってたぞ!」

「なぁ、今の聞いたか?ふつうあんな声でねぇよ!」

私は恥ずかしくて席に戻った。

その日、私に声をかけてくるのは誰もいなかった…

つまり友達が入学式初日からできなかったのだ…

とぼとぼ家路に向かっていると私のことを呼んでいる声が聞こえた。

声の主はお兄ちゃんだ


私のお兄ちゃんは私とは違って社交的で声も大きいし、
何より私にはいない友達をたくさん持っている。

私はそんなお兄ちゃんがうらやましかった。
お兄ちゃんが近づいてくるのが見えた。


でもそのお兄ちゃんの姿は涙で歪んではっきり見えなかった。


「琴葉?どうしたんだ?」


「お兄ちゃん…わ、私友達できないよぉ、お兄ちゃんみたいにいっぱい友達できないよぉ」

「琴葉…」


「どうしたら友達できるの?教えてよぉ」

「琴葉、いいこと教えてあげよう」

「え?」

「お兄ちゃんは別に友達は多いわけじゃないんだ」

「どういう意味?」

「お兄ちゃんには親友と呼べる存在は一人もいないんだ」

「親友?」

「親友ってのは友達の中でも一番仲のいいやつのことだ」

「うん…」

「お兄ちゃんにはそんなやつはいない。でも、琴葉にだったら一番頼れるやつが出てくるかも
しれないぞ?」

「いつ?いつできるの?」

「近いうちにできるようになる」

「だからそれまで耐えろ」

「うん。」

「よし。じゃあ帰ろう」

そういってお兄ちゃんは私の荷物を持ってくれた。

私は桜を見てこういった



「親友か、早くできたらいいなぁ~」





「琴葉何してるんだ?おいていくぞ!」



「あ、待って」










そういって私の一日は終わった…