「送ってくれてありがとう」


「家の前まで行く。ここじゃ送ったって言わないって。明日吉倉に怒られるだろ」


俺の言葉に、雪岡はクスクスと可笑しそうに笑った。


「ありがと。でも本当にすぐそこだから。だいじょぶだよ」


「いや、大丈夫って……」


遠慮しているのかと思って更に言葉をつなげようとしたが、俺を見る雪岡の表情が泣きそうな笑顔だと言うことに気付いて、言葉の途中なのに思わず口を噤んでいた。


「……だいじょぶだよ。ちゃんと、諦めるから。好きになってもらえるなんて思ってないから。だから」


「雪岡」


雪岡がその後に何を言おうとしていたのかはわからなかった。


聞きたくなかった。


雪岡が俺のせいで傷付いていること。

それが、声から、言葉から、滲み出ていたから。


……だけど、ただ、それだけだったのに。


「……水無月くん…?」