……いつもなら女子に触られても、笑いながらさりげなく振り払うだろ。
友哉、なんで固まってんだよ……。
気付いたら、強く拳を作っていて。
道理で痛いと思ったら、爪が掌に食い込んでいた。
なんで、……なんで。
自分のことなのに、その意味が分からない。
それに。
「……雪岡、これ飲んでちょっと落ち着け」
「へ?」
気付いたら、わざわざ友哉に触れていた方の雪岡の手をグイッと強く掴んでいて、さっき買ってきてもらった水の入ったペットボトルを握らせていた。
……そんな自分の行動の理由も、分からない。
雪岡は、握らされたペットボトルから俺へと、ゆっくり視線を移してきた。
大きな、深い黒の瞳。
一度、大きく瞬きをした彼女の瞳に自分が映っていて。
雪岡と一緒にいると、やっぱり頭の中には痛みを伴う音が流れて、それは今も変わらないのに。
その痛みが嫌で、雪岡のことを拒んでいたのに。
……それなのに、はっきりと痛みは感じるままなのに、視線を逸らしたくないと思うのは。
友哉を見るくらいなら俺を見ていて欲しいと思うのは、どうしてだろう。