額がぶつかった友哉に比べ、頭のてっぺんより少し後ろ、後頭部に近い部分がぶつかったらしい雪岡は友哉より傷が浅いのか、痛がる素振りひとつ見せない。
「落ち着けって。とりあえず頭は割れてねーから」
ぽん、と友哉の肩を叩いてそう言うと、振り向いた友哉は本気で泣きそうな顔をしていた。
……そんなに痛いのか。
少しだけ湧いてきた同情。
だけど、雪岡の隣で遠慮の欠片もなく、あははと軽やかに笑う吉倉の笑い声にそれも打ち消されてしまう。
「……このみん、ここ笑うとこじゃないからね!?」
「いい音したねぇ!!」
本気で痛がっている友哉のセリフにも、笑いながら楽しそうにそう言った吉倉。
すると、そんな楽しそうな吉倉の声を認識したのか、さっきまでぼうっとするだけだった雪岡が、ふいにへにゃっと笑って吉倉を見た。
「……あー、このみちゃんだー」
「梨音っ!ぶつかったとこ大丈夫!?」
「え、心配すんのそっち!?」
痛みも忘れたように素っ頓狂な声でつっこんだ友哉の声は、どうやら吉倉には届いていないようだ。