♯2-side* 航-
「梨音!?」
突然、驚いたような吉倉の声がして、友哉から視線をそちらに向ける。
するとそこには、すっかり机に突っ伏してしまっている雪岡がいた。
「……え、何?りおりん、寝ちゃったの?」
こんな唐突に!と、びっくりしたような、面白がるような声で言った友哉は、座っていた俺の隣から身を乗り出して、俺の向かいで机に突っ伏している雪岡を覗き込むようにして顔を近づけた。
……瞬間。
「っい!?」
突然、がばっと勢いよく突っ伏していた頭を上げた雪岡。
それと同時に、くぐもった友哉の声が聞こえて。
しかしその声よりも明らかに大きい、ゴッ、という鈍い音が聞こえたかと思ったら、雪岡の頭が友哉の額にクリーンヒットしていた。
「~~~~っ!!いってえええ!!痛い!!マジで痛い!!デコ割れた!!」
うぎゃああ、と悲鳴を上げて涙目になりながら、掌でぶつかった額を抑えて苦しんでいる友哉。
一方、そんな友哉のことを見えているのかいないのか、雪岡はどこかぼんやりとした視線であたりをきょろきょろと見まわしていた。