きっとこのまま冷たく当たっていれば、いくら心の広そうな雪岡だって、近いうちに俺のことを嫌いになるだろう。



俺のことが好きだなんて、きっと雪岡の思い込みだ。


こんなにも雪岡の音を、そして雪岡自身を拒絶してしまう俺のことを好きになんてなれるはずない。


……それに。

もしも本当に俺のことを好きになってくれたのだとしても、好きという気持ちが、一瞬で憎しみに変わることだってあるのだと、俺は痛いほどよく知っている。




本当は、こんなに冷たく接してしまう自分が嫌だった。


いくら彼女の奏でる音色が俺にとっては凶器でも、だからといって彼女を傷付けていい理由にはならない。

それは分かっている。

何も悪くない彼女を傷付けることに、罪悪感がないわけでもなかった。



……だけど、どうしても無理だった。


彼女はどうしても俺にとっては、恐怖、だった。



周りと同じように優しくするなんて、今の俺には到底無理だ。


……名前と顔、そして彼女が紡ぐ音。


雪岡に関してそれしか知らないから余計に、『俺が嫌いな音で弾く女』としか見ることができない。


もしかしたら、まっすぐに向き合えば今とは違う何かが見えるのかもしれない、そう思わないでもないけど。

だけど、雪岡自身のことを知るためには彼女と関わらなくてはならないと思うと、それも無理だと思うんだ。