恐ろしいほどに透き通った音。
強さを帯びた美しい音。
譜面から、ピアノから、彼女の指先から、音符が飛び出してきそうなくらい、生き生きとした音。
体中に響き渡るその音は、たくさんの感情を伝えてくる。
カラフルな、音色だった。
表情豊かなその音は、誰もが出せるものじゃない。
だからこそ、俺の大嫌いな人が奏でるそれと、ここまでそっくりな演奏を聴いたのは初めてだった。
言葉なんかよりずっと饒舌に感情を伝えてくる綺麗すぎるその音は、俺にとっては凶器だった。
ピアノから飛び出してきた、色鮮やかで生き生きとした音符たちが、まるで音そのものが刃物みたいに容赦なく、俺の心を傷付けていく。
……それでも、ただ、似ているというだけ。
俺が嫌う音とは別物だと、頭では分かっていた。
だけど、分かっていても、無理だった。
強く美しいその音はどうしても、俺の心を攻撃するように感じてしまうんだ。