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弾き終わって、礼をして顔を上げたら、大きな拍手に包まれていることがすごく幸せになって、思わずはにかんだ。
すごくすっきりした気持ちで、演奏前の緊張も嘘みたいになくなっていた。
すごく気持ちよかった。
……そんな、心地良い満足感に浸っていた私だったけれど。
不意に、タンッ、という微かな足音が聞こえて、思わずそちらに目線を投げた。
ステージ裏の奥。
客席の方からは見えていないステージ裏に現れた人物を見た瞬間、思わず身体が固まってしまった。
『雪岡さん、ありがとうございましたー!素敵な演奏でしたね!』
司会の声にハッとして、慌てて一歩踏み出す。
ステージ裏に現れた人────、水無月くんの方にはけるしかなくて、戸惑いながらも彼の方に向かった。
「……めん」
「え?」
水無月くんのところに行くと、彼はなにかをこらえるような顔をしていた。
……黒のスーツがとてもよく似合っていて、苦し気な表情にも関わらず思わず見惚れてしまう。
「ごめん。……全然、違ったよ」
「違った……、って何が?」
水無月くんの言葉の意味が分からず首を傾げて聞き返すけど、心の中は、久しぶりにまっすぐ聞けた水無月くんの声にドキドキしているのがバレてしまわないかという不安と、素直に嬉しい気持ちが渦巻いていた。