唐突に、掌に温かさが触れた。


「!?」


すぐにその温かさに私の手が包まれて、キュッと結ばれる。


「行くよ」


「え」


グイッ、と繋がれた手が強く引かれた。


水無月くんが歩き出すままに、ついていくしかなくて。


「彼氏がいるならはじめからそう言えよ!」


後ろでそんな声が聞こえたけれど、それに答えられる言葉を残念ながら私は持ち合わせていなかった。


……だって、本当に彼氏なんかいないんだから。



……私の手を引き、早足で人混みを抜けていく水無月くんの歩調についていくのに必死。


だけど、それでも。


どうして水無月くんがあんなふうに助けてくれたのか、うまく自分を納得させられずに、頭の中をぐるぐるとどうしようもない考えが巡っていた。