「私、時々文化祭の準備してる航くんのこと、見てたよ。……だけど、航くんはいつだって雪岡さんのことしか見てなかったもん……」


今にも消え入りそうな声が、私の心を大きく揺さぶる。


私のことを見てた?


なに、それ……。


ドクドクと、心臓がまるで耳に近づいたかのように脈打つ音が大きく聞こえる。


期待しているのか、緊張しているのか、どうしてこんなに自分が動揺しているのか、理由が分からなくなるくらい、鼓動が速くなっていた。


水無月くんの言葉を聞くのが怖い。


また否定されたらと思うと、怖くてたまらない。


……それなのに、どうしてもここから離れられないのは、どこかで水無月くんの好意を期待している自分がいるからなのだろうか。



……ううん、違う、期待なんかしちゃダメ。


水無月くんが私のことを好きだなんて、そんなわけないんだから。


だって私はもっと冷たく突き放されたんだよ。


フラれる時だって、あんな優しい『ゴメン』、くれなかったもん……。


────すう。


聞こえるわけないのに、水無月くんが声を出す前に呼吸した音が耳に届いた気がした。