*****


厨房で1時間、そのあとフロアでも1時間シフトをこなして、解放される頃にはすっかりへとへとになっていた。


接客なんて経験なかったし、笑顔を作るのってこんなに難しいんだって思った。


……心が重いから、余計にそう感じたのかもしれないけど。


「このみちゃん、探さなくちゃ」


教室を出て、ため息交じりに呟く。


私が厨房からフロアに移ったときにはすでに水無月くんの姿は無くて。


もともと今野くんの代打だったわけだし、それに深い理由なんてないのかもしれないけど、もしかして私と顔を合わせたくなかったから早くシフトを抜けたのかも、なんて考えてしまって更に心が沈んだ。



『さっきは本当にごめんなさい。今どこにいるの?』


そうこのみちゃんにメールを送って、返信を待つ間、とりあえずこの恥ずかしいウェイトレスの格好をなんとかしたくて、校舎の端にある着替えを置いた教室に戻ろうと歩き出す。