ふいに、横からそんな声が聞こえ、びっくりして反射的に声のした方に視線を向けると。


「っ！！」


思った以上に近い距離に水無月くんの顔があって、思わず目を瞠った。



「雪岡がそんなふうにため息吐くのなんて見たことないし……、俺が原因なんだろ。いいよ、別に嫌なら嫌で」


「ち、ちが……っ」


私の手元から、いれたばかりの紅茶の入ったコップを持ち上げ、私に背を向けてしまった水無月くん。


「違う」と言いたかったのに、それすら満足に言えない自分が本当に嫌になる。


……だけどそれ以上に、私の何気ないため息がどうやら水無月くんを傷付けていたっていうことが彼の表情から痛いくらい分かって、安易に自分の中の思考に浸っていたせいで周りが見えなくなっていた自分を殴りたいくらい後悔した。



「いつまでたっても俺にだけ敬語だしさ。……俺のこと怖いんだろ？」


「え」


敬語……？