「おつかれ。俺、今手あいてるから足りない物があったら買い足しに行くけど……、ってなにこの空気」
「えと……。このみちゃんが今野くんと何かあったみたいで……、あ」
水無月くんに話しかけられたことで動揺して、思わず口が滑ってしまった。
言ってしまってからハッとして、思わず口を掌で覆う。
私の言葉に、このみちゃんの頬に浮かんだ朱の色が耳にも走る。
うわあああ、今の、完璧に失言だった……!!
「あ、違うの!そうじゃなくて、えっと」
どうしようどうしよう、なんて言ったらいいの!?
頭が完全に混乱している中、ガタン、と物音がして音がした方を見れば、今野くんが厨房の方に入ってくるところだった。
「……このみん」
今野くんがこのみちゃんを呼ぶと、隣でびくりと肩を跳ねさせたこのみちゃん。
厨房側に入ってきた今野くんが、一瞬躊躇った後、このみちゃんの肩に掌を置いて俯いたままのこのみちゃんを振り向かせようとしたけれど。
「こ、このみちゃん……!!」
今野くんの手が触れた瞬間、一瞬だけ驚いたような表情で今野くんを見たけれど、すぐに顔を背け、そのまま逃げだしてしまった。