カフェはそこそこ盛況しているようで、用意されたテーブルは全てお客さんで埋まっている。
ちょうどフロアに出ていた今野くんが、私とこのみちゃんが教室に入ってきたのを見てニコッと笑った。
「お、おつかれ」
ふいっとこのみちゃんが今野くんから視線を逸らして言う。
……どうしたのかな。
「今野くん、お疲れ様。シフトかわるね」
「や、俺あともう1時間フロアなんだよね。このみんとリオりん、次は厨房担当でしょ?」
「あ、そっか。行こ、このみちゃん」
「……うん」
今野くんとは依然視線を合わせようとしないまま、このみちゃんは頷いて、教室を暗幕で仕切った厨房の方へ歩き出そうとした。
……やっぱり、このみちゃん、なんかヘン……。
そう思いつつ、このみちゃんの後を着いていこうとすると。
「このみん」
私の横からスッと手を伸ばした今野くんが、このみちゃんの腕を掴んで軽く引き寄せた。
それから、何かこのみちゃんの耳元で言うと、パッとすぐに掴んでいた手を離し、「じゃあふたりとも頑張ってね」とにこやかに笑顔を向けると再び接客に戻っていく。
……え、なになに!?