「ちょっとちょっと梨音、そのジャージはないわー」
「え」
横から呆れたようなこのみちゃんの声が聞こえて、ハッと我に返った。
このみちゃんの視線の先は、他でもない、私のスカート。
カフェの皆でおそろいで作ったウェイトレスの衣装。
白いシャツ、フリルがついたエプロン、……そして短いスカート。
ふわっと空気を含んで簡単に広がるそのスカートは、いくら普段制服でそこそこ短いスカートに慣れているとはいっても少々抵抗を感じてしまうほどで。
フロアに出るまではいいかな、と思って作業用に持ってきていた紺色のジャージをスカートの下に履いていた。
「だって……短すぎるんだもん、このスカート」
「何言ってんの、制服とそんなに変わらないじゃん。
梨音、せっかく細いんだから!隠しちゃったら男子が泣くでしょ」
「なんで泣くの。そりゃあ……、ダサくて敬遠はされるかもしれないけど」
「ふーん……、水無月くんにも敬遠されてもいいの?」
「え」
どうしてここで水無月くんが出てくるの、と言い返せばいいものを、このみちゃんの口から水無月くんの名前が出ただけで、カッと顔が熱くなってしまう不思議。