「当たり前だろ。坂井でさえ重すぎて逃げたくらいなんだから、雪岡には無理だって」
「はっ!?逃げてねーし!!」
「はいはい」
親切にカート持ってきてやったのにそんな言い方ないだろー、とぐちぐち言ってる坂井は放っておいて、俺は「貸して」とカゴを持ち上げてカートに乗せた。
「ありがとうございます」
ふわりと、雪岡が嬉しそうに笑った。
「……いや」
「梨音ちゃん、もう選び終わった?レジ超混んでたよ」
「本当?うん、ひととおり買ったしお会計しちゃおうか」
ニコニコと笑顔を絶やすことがない雪岡に。
……チクリとした痛みを、理由が分からない痛みを感じた。