あんなに視界に入れたくなかったのに、楽しそうな雪岡を見ている今の俺が考えているのは全く逆だった。
こんなふうに楽しそうに笑ってくれるなら。
こんな笑顔だったら、いつまででも見てられる、なんて────。
「お待たせ!」
雪岡を眺めながらぼんやりしていた俺は、元気のいい声に思考を中断させた。
……つーか俺、何を考えてんだよ……。
「坂井くん。ありがとう」
坂井が持ってきたカートにカゴを置こうとカゴを持ち上げた雪岡は、しかしその重さに驚いたように目を丸くさせた。
「ほ、ほんとに重いね……!」
両手でカゴの取ってを持ち、数センチ床から持ち上げただけですぐに下ろしてしまう。
「私にはちょっとここまで持ち上げられないかも……」
申し訳なさそうに眉尻を下げて首を傾げた雪岡に、思わず笑ってしまった。