返事のない俺を不思議そうに見て、雪岡が不安げな声で俺を呼んだ。


その目は確かに俺を見ていて。


そして、俺の視線だって雪岡に向いていて。


……前だったらそれだけで、頭と心を壊そうとするような大音量のメロディーが流れてきたのに。



「水無月くん」


依然返事をしない俺を、雪岡がもう一度呼んだ。


その声はさっきよりも少し、不安げな色を濃くしていて。


ようやくハッとして、「ああ」と空返事を返した。



「私が適当に選んじゃっていいですか?」


「あー、うん。俺詳しくないし」


「わかりました」



頷いて、棚からポイポイと商品をカゴに入れていく雪岡。


「これ美味しそう」なんて、微かなひとりごとも楽しそうだ。