しかし、気のせいかと思うほど本当に一瞬で。
……だけど、もう一度。
今度は確かに雪岡の視線が俺に向いた。
目が合った瞬間、伏せられてしまったけど。
「……お、重くないですか……?」
「え」
視線は合わせてくれないけど、雪岡の言葉が俺に向いてる。
理由なんか分からないけど、無意識のうちに彼女から視線を離せなくなっていた。
あの日以来、初めて彼女からかけられた言葉だった。
……あの日。
自分で言うのもなんだけど、どんなにイラついていたって普段は滅多に物に当たったりしない。
なのに、あの時はどうしても感情が抑えられなくて。
頑なに「ごめん」を言い続ける雪岡を見たくなかった。
あんなふうに雪岡が謝るのだって自分のせいだってわかっているのに。
「2リットルペットって結構重いから……、そんなにカゴに入ってて、大丈夫かなぁって思って…」