「ありがとう」
「2部あったけど、多分1部はあたしのだよね?」
「あ、うん。そうだと思う」
私も受け取っただけでまだ見ていないから、2部渡されたなんて知らなかったけど、それなら同じカフェ担当のこのみちゃん用だろう。
「本当、拾ってくれてありがとね」
そう言って自分の席に戻ろうとしたら、このみちゃんがニヤリと笑った。
な、何?ニヤリ、って……。
思わず踏み出していた足も止まる。
「……どうして梨音を呼んだんだろうねー?」
ニヤニヤ顔のまま、このみちゃんはそう言った。
私はといえば、このみちゃんのセリフの意味が分からずぽかんとしてしまう。
「え……?」
「あたしだって教室にいたんだし。文化祭のプリント渡すだけなら、呼びだすの梨音じゃなくてあたしでもよくない?」
「……」
「どうしてかなー?」
このみちゃんの言葉に被さるように、本鈴が鳴り響いた。
……にっこり。
今度はいつもの可愛い笑顔を残して、このみちゃんは自分の席へと軽快な足取りで戻っていく。