「あ、ごめん!」
後ろから、そんな声と仲間と一緒に走り去っていく軽やかな足音が聞こえて。
それでようやく、ぶつかられたせいで転びそうになったんだって気が付いた。
……ん?
転びそう……?
「っ!!」
こ、この目の前にある布は何!?
私、咄嗟に何にしがみついて……!
慌てて顔を上げたら、驚いたような顔をした水無月くんと目が合った。
「……」
「……」
お互いに驚きすぎてフリーズしてしまい、しばしの沈黙が流れる。
こんなに長い間視線が絡んだのは初めてかもしれない。
頭の中が真っ白だ。
何も考えられなくて、……考えられないのに、どういうわけか鼓動だけはドクンドクンと速度を上げて。
視線だけじゃなく思考まで絡め取られてしまったみたいな、ヘンな感覚。