気付いたら、離したはずの手を、掴んでいた。


ギュッと力を入れて握れば、雪岡は戸惑ったような表情を浮かべて俺を見た。



「どうしたの……?」


「……送るってば。家、どっち!」


「え、あの」


「どっち!」


俺の勢いに戸惑いながらも、雪岡はおずおずと歩き出す。


……どうして、自分から彼女に関わろうとしているんだろう。


雪岡と一緒にいたら痛いから。


辛いから。


……嫌なことを、思い出すから。


だから、雪岡を傷つけてまで遠ざけようとしていたはずなのに。




「えと……、ここ、です……」



やがて、雪岡はそう言って立ち止まった。


本当に駅から近かった。徒歩5分といったところだろうか。


カーテンがひかれた大きな窓からオレンジ色のあたたかい明かりが洩れる、綺麗な家。


そういえば、学校を出たときはまだ明るかったのに、いつの間にかぼんやり月が見えるくらいに日が落ちている。