「触るな。菖蒲は俺の妻だ。お前には渡さん」

「まぁ、いいや。今日のところは自己紹介程度にしててあげるよ。
そんなことより、円ちゃん。僕の結界を破ったからには・・・手伝ってくれるだよね?」

二人が菖蒲を背にするように立つ。

空気が張り詰めていることに菖蒲も微かに気づいた。この気配は・・・物の怪だろうか。

よく気配を辿っていくと、ものすごい数の狐の妖怪が一瞬にして菖蒲達を取り囲む。

随分と瘴気にやられてしまって我を失ってしまっているようだ。

そんな物の怪を目の前にして、不敵な笑みを浮かべる円と凪。その表情から、余裕さえ感じられた。