次の日ーーー

「お迎えに上がりました、菖蒲様」

いつものように一礼し、海が現れる。

「言っとくけどあたし、東峰院に嫁ぐわけじゃないから。今の自分じゃ何もできないから、あんたたちの力を利用するだけ」

一瞬、海の目が細められる。けれど、また元の表情に戻る。

一体何を考えているのか読めない青年だ。

「それでも円様の処へ行かれるのです。我々は迎え入れろとの命を遂行するまで」

不安で胸が張り裂けそうだ。

何が起こるかわからない状況に飛び込んで行こうとする自分は、なんて無謀なんだと思う。

けれど、そうでもしなければ何も始まらないのだ。

だから、前へ進もうじゃないか。