はぁ、と溜息を一つついて、南川 菖蒲(ミナミカワ アヤメ)は一旦足を止める。

この異形に気づいているのは自分独りなんだと思う。周りを見渡しても誰一人叫び声をあげる人もいなければ、腰を抜かす人など在りはしないのだから。

「君たちさ、もっと他のところに行った方が安全だと思うよ?」

そう訪ねるが返事はない。

それは自分の言葉が通じていないだけなのか、無視されているのかはわからない。

いつものことだと諦めて、家路を急ぐ。