「どうして・・・」


 そう、一言呟く。


「避けようと思えばよけれたじゃないっ! なんでよ・・・」


 目の前には傷だらけの海が倒れている。


 急いで駆け寄って、力の抜けた海を抱き寄せる。


「思い出した・・・ 海は弟なんかじゃない・・・
貴方は・・・私が作り上げた・・・傀儡、だったのね・・・」



「・・・お前が、誰よりも幸せでいられる、よう、に・・・黙って傍らで、見守っている、つもりだった・・・」


 何をするにも、海は黙ってみていてくれた。


 東峰院家に引き取られたとき、「言霊師になる」といっても、反対もせず修行に付き合ってくれた。


「けど・・・俺は・・・お前に抱いてはいけない感情を、抱いてしまった・・・
円様の側にいるお前は、本当に幸せそうで・・・それがお前のためだと思った。
 けど、俺の感情だけは・・・制御出来なかった・・・」