「お母様?何処に行くの?」


 覚えているのは、母が幼い私達を懸命に庇いながら、追っ手を振り切ってくれたこと。


 繋いだ手は暖かくて。


 でも、その手を離さなければいけないんだって、いわれているような気がしていた。



「逃げるのです。お前達二人のことは・・・東峰院の若様に頼んであります。 
 それから・・・これをお前に託します・・・ 私の可愛い子・・・」


 その一枚の札は、お守りだと渡された。


 肌身離さず持ち歩けと。


「海、貴方は・・・風の双子の弟として生きるのです。風を守る男になりなさい・・・」


 海が頷く。


「風、海・・・母は、いつでも貴方達の幸せを願っています・・・」