昔から海に敵うものは持ち合わせていなかった。勉強も、言霊の力もすべて海が勝っていた。


 どんなに修行しても、何もかもが弟に負けていた。


 それが悔しくて悔しくて、惨めで・・・


 それでも、円や菖蒲は、自分を見捨てるなんてことはしなかった。


 だから、そんな二人の役に立てるなら。この身が朽ち果てようとも、目の前の者を倒さなければ。



「海、貴方にも思うところがあるように・・・私にも強い思いがあるの・・・だから・・・」


 懐から一枚の札を取り出す。


「それは・・・」


 海が眉を潜める。それと同時に海の警戒が一層強くなる。


 この札は、北条の里が焔に包まれた時、母が持たせてくれた形見の札。