「あら、あの二人を探していたという割には簡単に行かせるのね」


「どうせ、お前は俺をここから通さないだろ?」


「当たり前よ。そのためにここにいるんだから。貴女は私達を裏切った。弟の不始末を正すのも、姉の務めよ」


 札を構える。


 言霊師は言葉を操り、すべてを自由自在に操ることが出来る。風や海は札を使うことによって、その力を増大させている。


「今なら・・・許してあげるわ。円様は寛大なお方。それに菖蒲様だって・・・」


「許されなくてもいい。俺は自分の意思でお前と対峙してる。戦う覚悟も出来ているし、死ぬ覚悟も・・・出来てる」


 同じように海も札を構える。


 ”どうしてわかってくれないの? 私の考えてる事なんてわかってくれるじゃないっ!”


 そう言えたら楽なのに。真剣な眼差しが、風を射抜く。