「その時、助けてくれたのが円様だったのです。助けられた命とこの”言霊”の力が円様の役に立てるのならと、円様に一生仕えて行こうと心に決めましたの。
けれど、今の円様は桜様の言いなりで、見事に私と海は東峰院家から追い出されてしまったんです」


小さく笑う風は、いつもの強さを感じない。円に突き放されてしまったという現実が、風をこんなにも弱くしているのだろう。


それだけ、風にとって円は絶対的な存在だったのだ。