「お待たせしました」


どうやって門の外まで来たのか覚えていない。


無我夢中で駆け抜けて、何度も転びそうになったけれど、ここから離れたい。


円との思い出がたくさん詰まったこの場所から。


「菖蒲様・・・泣いておられるのですか?」


「・・・・・ごめんなさい、今は見ないでくれますか・・・?」


「東峰院の当主も、凪様も。貴女に惹かれてしまう訳がわかったような気がします」


そのまま棗は菖蒲を引き寄せ、抱きしめる。