「ねぇ、円。あの子を守りたい?」


「・・・お前は、何を企んでいるんだ?どうやって式神を召喚した?」


「あら、疑ってるの?貴方の本当の許嫁がその資格を得たんだから、もっと嬉しそうな顔して欲しいわ?」


「菖蒲をどうする気だ・・・?」


「それは円次第かな?菖蒲を生かすも殺すも・・・私の一言で済む。
私を妻として東峰院家へ迎え入れてくれれば、菖蒲の命も、この世界も救える・・・知ってるでしょ?何故、退魔師と封魔師が婚姻を結ぶ意味を・・・」


何をしているんだ俺は・・・


大切な笑顔一つ守れやしない、大嘘付き。


「それで、お前の気持ちが晴れるのか?」


「そうねぇ。私がいれば、九尾の封印も完璧なものとなるし一石二鳥じゃない。それしか道はないわよ?」


頷くしかない、非力な自分。


離れることでしか、守ることが出来ないのだから仕方ない。


幼き頃から、いつでも心にあったのは菖蒲の笑顔だった。それを守り抜くことが自分の使命なのだと。


それが支えだった。


「わかった・・・」


握りしめた拳に力が入る。


「それでこそ、東峰院家ご当主様ね」


”まだまだ、貴方たちには苦しんでもらわなくちゃね・・・”


桜の最後の言葉は、風に消えて行った。