「そうですよね・・・」


「もし、最後に円の所に行くのなら棗をお供に連れて行くといい。何があるかわからないからね」


黙って頷く。誰かがそばに居てくれた方が心強いだろう。


一人が何より辛いのは自分が一番わかっていたし、何より凪の気持ちが有り難かった。


「棗、お前の役割はわかっているな?光巫女を、必ず命に代えても守るんだ。いいな?」


「主君の仰せのままに」


目つきや表情は西園寺家当主の顔つきで、いつも屈託のない笑顔を見ている菖蒲にとって、その表情は未だに慣れない。けれども、当主になるということは、すべての責任を背負って生きて行くということなのだろう。


「菖蒲ちゃん、何かあったら棗が守ってくれるから安心していいよ。僕は着いて行くことは出来ないけど・・・本当に大丈夫?」


「うん。最後に挨拶するだけだから大丈夫だよ。いつも心配ばかりかけてごめんね?ありがとう」


心配そうな凪に微笑みを返すと、納得したように手を振ってくれた。


そのまま棗と共に東峰院家へ向かう菖蒲だった。