* * * * *


戦争は終わった。
圧倒的な差での、日本の敗北だった。


須藤――、陽菜は無事に帰れただろうか。
そうであってほしい。


俺は陽菜が好きだった。

初めは、ただ俺の疑問の答えだとしか考えていなかった。
しかし次第に俺の中での陽菜という女の存在が大きくなった。
陽菜を守りたいと、思った。

想いを伝えようとは思っていなかった。
あのとき抱き締めたのは、いつか帰ってしまう陽菜を、感じたかったから。
陽菜のぬくもりを感じたかった。


口付けは、陽菜の告白に対する答えのつもりだ。
もう会うことのない存在だから、言葉にするのが憚れた。
言葉にしたら、きっと、陽菜を帰したくなくなって、何をしていたか分からない。


(これでよかったんだ。)