――…


夜、甲板に出た。

あのあと、霧島さん宛に手紙を書いた。

伝えたかった。
霧島さんと話して分かったこと、もっと生きていてほしかったこと。
わたしは霧島さんを忘れないということ。


手紙を丁寧に折り畳んで、海に投げた。
霧島さんが沈んだのは、この海のずっと遠く。
届くはずがないと分かっているけど、どうか、

どうか、彼の元へ。


手紙はすぐに見えなくなった。
流されてしまったのか、沈んでしまったのかは分からない。



「霧島さん、本当に、ありがとう。」



どこからか、汽笛の音が聞こえた気がした。