――…

夜も深くなり、お酒も終わりが見えた。
乗組員さん達は、明日の昼に出発だというのに、まだ帰ってこないようだ。
わたし達以外に、このフネには誰もいない。


「……慣れたか、ここには。」


お酒をぐいっと飲み、一息ついた長門さんが口を開く。


「はい。みなさん、優しくしてくれますし、本当に助けていただいて感謝してます。」
「…そうか。だが、困ったことがあったら云え。」


お酒を注ぐと、またぐいっと飲み干す。
飲むペースが早い。


「ありがとうございます。今のところ、大丈夫です。」
「…………、」
「長門さん?」


いきなり黙ってしまったのを不思議に思い、顔を覗き込んだ。
寝ていると思ったが、ちゃんと起きていて漆黒の瞳とぶつかる。
視線が交わったことに、どきりとして慌てて視線を反らした。


「…お前は、」